空き家売却の全知識
方法・期間・税金・特例まで専門家が解説
「相続した実家が空き家のままになっている」「維持費や固定資産税がもったいない」と感じつつも、何から手をつければいいか分からず放置してしまっている方は少なくないのではないでしょうか。
しかし、空き家の放置は経済的な損失だけでなく、法的なリスクや近隣トラブルの原因にもなります。
そこで本記事では、不動産の専門家が推奨する空き家売却の全知識を徹底解説します。
この記事を読めば、あなたの空き家に最適な売却方法が見つかり、損をすることなくスムーズに手放すことができるようになるでしょう。
目次
1- なぜ売却を検討すべきなのか?放置のリスク
空き家を所有し続けることは、単に「建物がある」以上のリスクを背負うことを意味します。
維持コストの増大(固定資産税と管理費)
誰も住んでいなくても、不動産の所有者には毎年固定資産税がかかります。また、建物は人が住まなくなると風通しが悪くなり、カビの発生や老朽化が急速に進みます。これに伴い、庭木の越境対応や建物の修繕、さらには火災保険料などの維持費が重くのしかかります。
「特定空家等・管理不全空家等」指定による税金の増加
2023年の法改正により、倒壊の危険がある「特定空家等」に加え、放置すれば特定空家等になるおそれがある「管理不全空家」も、固定資産税の優遇措置(住宅用地特例)の対象外となりました。
指定を受けた状態で勧告を受けた場合、土地の固定資産税が最大で6倍に跳ね上がることが想定されます。さらに、危険性が著しい場合は自治体による行政代執行が行われ、その解体費用は所有者に請求されます。
損害賠償責任のリスク(倒壊・放火)
空き家は家財やゴミ、枯れ葉が散乱しやすく、放火の対象になりやすい環境です。万が一、火災が発生して近隣に延焼したり、建物の倒壊や破片の飛散で他人にケガをさせたりした場合、所有者は多額の損害賠償責任を問われることになります。
資産価値の急激な低下
不動産の価値は築年数に大きく左右されます。管理を怠れば劣化はさらに進み、いざ売ろうとしたときには「解体費用がかさむだけの負債」になってしまうおそれがあります。
2024年4月から始まった「相続登記の義務化」
以前任意だった相続登記が法律で義務化されました。相続を知った日から3年以内に登記を行わない場合、過料が科される可能性があります。
2- 空き家を売却する方法
空き家の状態や立地、売却の目的に合わせて最適な方法を選びましょう。
そのままの状態(中古住宅)として売却
建物を解体せずに売却する方法です。
メリットとして解体費用がかからず、早期に入居可能なことが挙げられます。デメリットは建物が古い場合、設備の不具合に対する「契約不適合責任」を負うリスクがあることです。
古家付き土地として売却
建物の価値をゼロとみなし、主に土地としての価値で売り出す方法です。
メリットとして売主が解体費用を負担する必要がなく、売却が決まるまで住宅用地としての税制優遇(固定資産税の軽減)を継続できることが挙げられます。デメリットとしては買主が解体費用を考慮して値引き交渉をしてくることが多く、更地より売却価格が低くなる傾向があります。
解体して更地として売却
建物を取り壊し、土地のみの状態で売却する方法です。
メリットとして、買主がすぐに新築を建てられるためもっとも需要が高く、早く・高く売れる可能性が上がります。デメリットとして解体費用が持ち出しとなります。また、1月1日時点で更地だと、その年の固定資産税が高くなる点には注意が必要です。
不動産会社による「直接買取」
不動産会社が買主となり、直接物件を買い取る方法です。
メリットとしては比較的短い期間で現金化でき、仲介手数料もかかりません。残置物の処分まで一括で任せられる場合もあります。デメリットとして売却価格が市場価格(仲介)より安くなってしまいます。
空き家バンクやマッチングサイトの利用
自治体が運営する「空き家バンク」や、個人間売買を支援するサイトを活用する方法です。
メリットとして一般的な不動産会社が扱いたがらないような安価な物件や、田舎の物件でも買主が見つかるチャンスがあります。デメリットとして契約書の作成や内覧対応、価格交渉などを自分で行う必要があり、法的トラブルのリスクが伴います。
リフォームして売却
古くなった箇所をきれいにしてから売り出す方法です。
メリットとして内装の印象が劇的によくなり、清潔感をアピールできるため、成約率が上がります。
デメリットとして、多額の費用をかけても、その分を売却価格に100%上乗せできる保証はありません。買主が自分の好みにリフォームしたい場合、逆に敬遠されることもあります。
3- 売却までにかかる期間と手続きの全ステップ
相談から引き渡しまで、一般的に6カ月〜1年程度の期間を見込む必要があります。
- 1.相場調査と会社選び:ネットでの簡易査定や一括査定サイトを利用し、複数の不動産会社の価格を比較します。
- 2.媒介契約の締結:信頼できる会社を選び、売却活動を依頼する契約を結びます。
- 3.売却活動:広告掲載、内覧対応を行います。空き家の場合は不用品を処分し、第一印象をよくしておくことが重要です。
- 4.売買契約の締結:価格や引き渡し条件に合意し、契約書を交わします。この際、一般的には手付金を受け取ります。
- 5.決済・引き渡し:残代金を受け取り、鍵と登記書類を渡して完了です。
- 6.確定申告:譲渡所得が出た場合は、売却した翌年の2月〜3月に確定申告を行います。
4- 空き家売却にかかる「諸費用」と「税金」の計算
手元にいくら残るかを知るために、費用の内訳を把握しましょう。
主な費用
- 仲介手数料:不動産会社への成功報酬です。売買価格が400万円を超える場合、「(価格×3%+6万円)×消費税」が上限となります。なお、800万円以下の場合は特例により最大33万円(税込)となる場合があります。
- 解体費用:木造なら坪あたり約3~6万円、RC造なら約5~7万円が目安です。庭石や浄化槽の撤去には別途費用がかかります。
- 測量費用:境界が不明な場合、確定測量に60~80万円程度かかることがあります。
- 登記費用(登録免許税):相続登記などに数万円、司法書士に頼むのであれば報酬に約10万円程度必要です。
かかる税金
- 印紙税:売買契約書に貼る収入印紙代です。売買価格によりますが、1,000万円超5,000万円以下なら1万円(軽減税率適用時)です。
- 譲渡所得税(所得税・復興所得税・住民税):売却益が出た場合に課税されます。
- 長期譲渡所得(5年超):税率 20.315%
- 短期譲渡所得(5年以下):税率 39.63%
5- 空き家売却で使える「3,000万円特別控除」の特例
譲渡所得から最大3,000万円を差し引ける特例の活用が重要です。
相続空き家の3,000万円特別控除
相続した「空き家」を売ったときに譲渡所得(売却益)から最大3,000万円(※場合により2,000万円)を差し引ける制度が、いわゆる「相続空き家の3,000万円特別控除」です。
制度のポイント
相続(または遺贈)で取得した、被相続人が住んでいた家(またはその土地)を、要件を満たして売ると譲渡所得から最大3,000万円を控除できます。
なお2024年1月1日以後の譲渡で、家と土地の両方を取得した相続人が3人以上いる場合は、控除額が2,000万円になります。
主な適用要件は以下のとおりです。
1)対象となる「家」の要件(被相続人居住用家屋)
- 原則として相続開始直前に被相続人が住んでいた家
- 昭和56年5月31日以前に建築
- 区分所有(マンションなど)ではない
- 相続開始直前に、被相続人以外が住んでいなかった(原則)
- 要介護等で老人ホーム入所など一定の場合は対象に入る
2)売り方のパターン
まずは相続などで引き継いだ自宅(建物)を売る、または自宅(建物)と一緒に土地も売るケースです。
この場合には相続してから売るまでの間、その家を事業に使っていないこと・貸していないこと・誰も住んでいないこと、そして売る時点で耐震基準を満たしている必要があります。
また相続した自宅を全部取り壊したり除却したりして、その後に土地を売るケースについては以下が必要です。
- 相続してから取り壊すまでの間、その家を事業に使っていない・貸していない・誰も住んでいない
- 相続してから土地を売るまでの間、土地もその家を事業に使っていない・貸していない・誰も住んでいない
- 取り壊してから土地を売るまでの間、その土地を建物や構築物の敷地として使ったことがない(=更地のままにしている)
相続から売るまで、家を事業に使っていない・貸していない・誰も住んでいないことが前提となります。そして売った後に、翌年2月15日までに耐震基準を満たす状態にする(耐震改修など)、または家を全部取り壊すことが必要です。
なお「売った後に取り壊す」パターンは、2024年1月1日以後の譲渡が対象です。
3)期限・金額の条件
- 相続開始日から3年経過する日の属する年の12月31日までに売る
- 売却代金が1億円以下
- 親子・夫婦など特別な関係の相手への売却は不可
手続き
確定申告で申請し、所定の添付書類を添付します。書類の中で特に重要なのが、市区町村から交付される「被相続人居住用家屋等確認書」です。
居住用財産の3,000万円特別控除
居住用財産の3,000万円特別控除(マイホームを売ったときの特例)はマイホームを売って利益(譲渡所得)が出た場合に、所有期間の長短に関係なくその利益から最高3,000万円まで差し引ける特例です。
1)何が起きる制度?
- マイホーム売却の「利益(譲渡所得)」から最大3,000万円を控除できる
- 利益が3,000万円以下なら課税される利益が0円になることもある
2)対象になる「居住用財産」って?
基本は「自分が住んでいる(住んでいた)家屋と、その敷地」が対象です。ほかにも過去に住んでいた家などが当てはまりますが、原則として住まなくなった日より3年を経過する日が属する年の12月31日までに売る必要があります。
3)注意が要る代表パターン
以下の条件を満たすことが必要です
- 売った年の前年・前々年にこの特例(※ただし「被相続人の居住用財産に係る譲渡所得の特別控除の特例」でこの特例を使っていた場合は除く)もしくはマイホームを売って損が出たときの損益通算や繰越控除の特例を使っていないこと
- 売った年・前年・前々年に、マイホームの買換え(住み替え)特例とマイホームの交換の特例を使っていないこと
- 売った家屋や敷地について、収用等の場合の特別控除など、別の特例を適用していないこと
- 身内など「特別な関係の相手」への売却ではないこと
4)手続き(いつ・何をする?)
売った年の翌年に、原則確定申告でこの特例を適用します。申告時に「譲渡所得の内訳書」など、所定の書類をつけて出します。
プロが教える「高く・早く」売るためのテクニック
この章では高く早く売るためのコツを解説します。
解体のタイミングは「1月2日以降」に
1月1日時点で建物が壊されていると、その年の土地の固定資産税が跳ね上がります。解体は1月2日以降に行い、その年の中に売却を完了させるスケジュールがもっとも税制上の負担が少なくなります。
「インスペクション」で信頼を担保する
専門家による建物調査(インスペクション)を行うことで、買主に安心感を与え、引き渡し後のクレームを防ぐことができます。
「ハウスクリーニング」と「不用品処分」を徹底する
リフォームまでは不要でも、プロのハウスクリーニング(特に水回り)を入れるだけで、内覧時の印象は劇的に変わります。また、自治体のゴミ回収を利用して自分で荷物を処分すれば、業者に頼むより費用を抑えられます。
空き家管理サービスを利用する
空き家管理サービスを利用して定期的な換気や清掃を行うことは、建物を長持ちさせる一番のコツであり、将来「高く・早く」売るためのもっとも効率的な投資となります。
6- 売却時の注意点:トラブルを未然に防ぐために
共有名義の場合は全員の同意が必須です。兄弟で分割相続している場合など、名義人が複数いる場合は一人でも反対すると売却できません。早い段階での意思統一が必要です。
また「とりあえずリフォーム」は避けたほうがよいでしょう。自己判断でのリフォームは、費用を回収できないリスクが高いです。必ず不動産会社に相談してから検討しましょう。
そして自治体の補助金を確認しましょう。多くの自治体で空き家の解体費用に対する補助金が用意されています。着工前に申請が必要なケースが多いので注意してください。
7- 空き家売却に関するQ&A
この章では空き家売却に関するよくある質問にお答えします。
Q. 賃貸に出すのと売却するのはどちらが得ですか?
将来的に自分が住む予定がないのであれば、売却を推奨します。賃貸は管理の手間や修繕費がかかり、建物が古くなれば結局将来の売却価格が下がるリスクがあるためです。
Q. 査定は無料ですか?
多くの不動産会社が無料で行っています。
まとめ
空き家売却を成功させる第一歩は、「現状の適正な市場価値」と「特例が使えるかどうか」を確認することです。放置期間が長くなるほど建物の劣化は進み、税制上の優遇期限(相続から3年)も近づいてしまいます。
空き家という「重荷」を、価値ある「資産」に変えるために、今すぐ準備を始めましょう。
空き家を売却する予定があるなら、早い段階で空き家管理サービスを利用するのがおすすめです。
売却までの間に換気や通水、簡易清掃などの手入れが入るだけで、カビ臭・湿気・劣化の進行を抑えられ、内見時の印象が大きく変わります。
結果として「指値(値下げ交渉)」の材料を減らし、売却価格と成約スピードの両面で有利に進めやすくなるでしょう。遠方に住んでいて頻繁に見に行けない方ほど、管理を仕組み化しておく価値が高いです。
ダスキンの空き家管理サービスをぜひご利用ください。