空き家解体補助金について
金額の目安・申請の流れ・注意点などを解説
日本各地で空き家の増加が止まらず、問題は年々深刻さを増しています。背景には、人口減少や高齢化、都市部への人口集中など、日本社会の構造変化があります。
十分な管理がされない空き家は、老朽化による倒壊リスクや火災、ゴミの不法投棄、景観の悪化など、周辺住民にとって大きな不安要素となります。こうした問題を減らし、土地を有効に使える状態に戻すために設けられているのが、各自治体が実施する「空き家解体補助金」です。
この記事では、この補助金の基本的な仕組みやもらえる金額の目安、申請時に必ず押さえておきたいポイントまでを解説します。
目次
1- 空き家解体補助金とは?―自治体の補助制度
この章では空き家解体補助金について概要を解説します。
制度のねらいと財源のイメージ
「空き家解体補助金」という名称は通称で、自治体ごとにさまざまな名称がついています。
共通している目的は、
- 周辺の景観を守る
- 老朽化した建物の倒壊や火災を未然に防ぐ
- 不法侵入や放火など犯罪の温床となることを防止する
といった、地域の安全と暮らしやすさの向上です。
財源の多くは、国土交通省が実施する「空き家再生等推進事業」や「空き家対策総合支援事業」など、国の補助制度により支えられています。
国が自治体に予算を配分し、そのお金をもとに自治体が個人の所有者へ補助金を支給する仕組みです。
そのため、申請窓口は国ではなく、空き家がある市区町村役場となります。
主な補助制度のタイプ
自治体が用意している空き家関連補助はさまざまですが、代表的なものは次の3種類です。
1. 老朽危険家屋解体撤去補助金
老朽化が進んでいて、放置すると倒壊の危険性があると判断される建物を対象とする補助です。自治体の担当者が現地調査を行い、「危険な状態」と判定された場合に利用できることが多くなっています。
2. 都市景観形成に関する老朽空き家解体補助
観光地や中心市街地など、街並みや景観を保つことが重視されるエリアで設けられている制度です。解体後の土地利用についても、景観形成の基準に沿った使い方が求められるなど、一定のルールが設けられているのが特徴です。
3. 建て替えを前提とした補助(建て替え支援)
耐震性などに問題がある古い住宅を取り壊し、新たな住宅を建てる場合に、解体費用だけでなく建築費の一部も併せて支援する制度です。老朽住宅を減らしつつ、安全性の高い住宅ストックに更新していく狙いがあります。
2- いくらもらえる?補助金額の上限と助成率の目安
この章では空き家解体補助金でいくら支給されるかについて目安を解説します。
金額の一般的な水準
空き家解体補助金の上限額は、自治体によってかなり差があるものの、多くの地域で20万~100万円程度に設定されています。
注意したいのは、解体費用の全額が補助されるわけではないという点です。
助成率は、解体費用の20~50%(1/5~1/2程度)としている自治体が見受けられます。
補助額は、
- 「標準除却工事費 × 延床面積」で計算した金額
- 実際の見積もり額・工事費用
このいずれか低いほうに、助成率をかけて算出する仕組みがよく採用されています。
3- 東京都の「空き家家財整理・解体促進事業」
東京都では、建物の解体だけでなく、家財整理の費用にも使えるユニークな補助制度がスタートしています。申し込みは、「東京都空き家ワンストップ相談窓口」を通じて行います。
対象となる費用と金額
- 家財整理費用:建物内や敷地に残った家財の片付け、運搬、処分など。上限:5万円(補助率1/2)
- 解体費用:建物解体、敷地の整地、廃棄物の運搬・処分費用。上限:10万円(補助率1/2)
利用するための主な条件
主な条件は以下のとおりです。
- 東京都内の空き家であること
- 「空き家ワンストップ相談窓口」に事前相談していること
- 相談窓口から紹介された協力事業者と契約すること
- 1年以上使用していない、またはそれに準ずる空き家であると見込まれること
- 暴力団関係者でないこと など
相談から事業者紹介、申請手続きまでワンストップで支援してもらえるため、「何から始めればいいか分からない」という人にとっては非常に心強い仕組みです。
4- 補助を受けるために押さえたい共通条件
細かな要件は自治体ごとに異なりますが、多くの空き家解体補助制度に共通する主な条件は以下のとおりです。
1年以上使用されていないこと
「空き家等対策特別措置法」で定められる空き家のイメージに沿って、電気・ガス・水道の使用実績が1年以上ないことなどが目安となります。
市税などの滞納がないこと
住民税や固定資産税などを滞納していると、補助金の交付対象外とされるケースがほとんどです。申請前に納付状況を確認しておきましょう。
所有者または相続人であること
登記事項証明書などで所有権を証明できることが前提です。共有名義の場合は、共有者全員の同意書の提出が必要となるのが一般的です。
5- 申請~入金までの流れ
空き家解体補助金を利用する上で、もっとも重要なのは「工事を始める前に申請すること」です。ここを間違えると、条件を満たしていても一円も補助が受けられないことがあります。
大まかな流れは以下のとおりです。
1. 事前相談と現地確認
まずは空き家の所在地の自治体窓口に相談し、対象になりそうかどうかを確認します。必要に応じて職員が現地を訪れ、劣化状況や危険度を判定する調査が行われます。
2. 解体業者からの見積もり取得
解体工事の見積書を提出する必要があるため、業者から見積もりを取り寄せます。自治体によっては「市内の解体業者に限る」といった条件がついていることもあるため、業者選びの際に必ず制度要件を確認しましょう。
3. 補助金交付申請書の提出
- 見積書
- 現況写真
- 不動産の登記事項証明書
- 市税の未納がないことを証明する書類 など
を整えて、交付申請を行います。
4.審査・現地確認 → 交付決定
審査には数週間~1カ月程度を要するのが一般的です。この決定通知が届く前に、解体工事に着手してしまうと補助対象外になるため、焦らず待つことが大切です。
5. 解体工事の実施
交付決定後、業者と正式に契約し工事を開始します。工事中~完了時には解体後の写真や廃棄物処理のマニフェスト(処分証明)などが後の手続きで必要になるため、あらかじめ業者にも共有しておきましょう。
6. 実績報告と補助額の確定
工事完了後、領収書の写しや完了写真などを添付して実績報告書を提出します。
7. 補助金の振込
報告内容が確認されると、指定口座に補助金が振り込まれます。ほとんどの制度は立替払い(後払い方式)のため、いったんは解体費用の全額を業者に支払えるよう、資金計画に余裕を持っておく必要があります。
6- 空き家の解体費用の相場
解体費用は建物の構造や立地条件によって変動しますが、坪単価の目安は次のとおりです。
- 木造住宅:3万~5万円/坪
- 鉄骨造:4万~6万円/坪
- 鉄筋コンクリート(RC造):6万~8万円/坪
ただし、これらは建物本体の解体を想定したざっくりとした金額であり、次のような要素によって費用がさらに増えることがあります。
古い建物でアスベストを含む建材が使われている場合、専門的な除去作業が必要となり、その分コストが高くなります。ブロック塀やカーポート、庭の樹木や庭石、浄化槽など、建物以外の部分を撤去・処分する費用も加算されます。
前面道路が狭く、重機が入れない場合は、人力による解体作業が増え、通常より高額になりがちです。建物内部に大量の家具や生活ゴミが残っていると、その処分料も別途かかります。事前に片付けておくか、家財整理も含めた見積もりを取ることが重要です。
7- 空き家を放置することによるリスク
「解体費用が高いから…」と先送りにして空き家を何年も放置していると、その場しのぎのつもりが、結果的にもっと大きなコストやリスクを抱え込む原因になりかねません。
長期放置によって生じる主なデメリットは、次のとおりです。
「特定空家等」指定と過料(罰金)のリスク
建物が老朽化して倒壊のおそれがある、屋根や外壁が落ちそうになっている、ゴミが放置されて衛生上問題があるなど、明らかに管理が行き届いていない空き家は、市区町村から「特定空家等」に指定される場合があります。
特定空家等に認定されると、自治体から改善・是正の勧告や命令が出され、それでも対応しない場合、行政代執行(強制的な撤去等)や過料の対象となる可能性があります。
勧告・命令に従わない状態が続くと、最大50万円の過料(事実上の罰金)を科されることもあり、放置が「安く済む」とはいえなくなってしまいます。
固定資産税が大幅に上がるおそれ
もともと住宅が建っている土地には、「住宅用地の特例」と呼ばれる優遇措置があり、一定の要件を満たせば固定資産税が最大6分の1まで軽減される仕組みになっています。
ところが、その空き家が「特定空家等」や「管理不全空家」として自治体から勧告を受けた場合、この住宅用地特例が適用除外とされてしまうことがあります。
特例が外れると、税金の計算上は更地とほぼ同じ扱いになり、毎年の固定資産税が一気に跳ね上がります。長期的に見ると、解体費用以上の税負担になるといった状況に陥るリスクがあります。
事故が起きた場合の損害賠償リスク
老朽化した建物を放置していると、屋根瓦や外壁材、ベランダの一部などが落下して通行人にケガをさせたり、強風や地震などをきっかけに建物が部分的に倒壊し、隣家の外壁や車を壊してしまったりする事故につながる危険性があります。
このようなケースでは、所有者に重い管理責任が問われる可能性が高く、場合によっては治療費や休業補償、壊れた建物・車などの修理費などを含めた高額な損害賠償義務を負うことになりかねません。
「何もしないでいること」が、かえって大きな経済的リスクを生む典型的なパターンです。
治安・衛生環境が悪化し、地域にも迷惑をかけるリスク
人の出入りがない空き家は、次第にゴミの不法投棄場所として狙われやすくなります。さらに、庭や建物の隙間に
- ネズミ
- ハクビシン
- アライグマなどの害獣
- ハエ・蚊などの害虫 など
が住みつくことで、悪臭・騒音・フン害など周辺環境への悪影響が広がります。
また、放置された空き家は、放火のターゲットになりやすくなり、空き巣や犯罪グループに不法占拠される拠点として利用される可能性があるといった治安面のリスクも抱えています。
一軒の空き家がきっかけで、地域全体の安全・景観・住環境が損なわれることも少なくありません。
越境・景観トラブルなど近隣との関係悪化
建物だけでなく、庭木や竹林の管理不足も大きな問題になりがちです。手入れをしないまま年月が経つと、庭木の枝や竹が隣家の敷地や道路へ大きくはみ出す、落ち葉が隣家の雨どいを詰まらせる、日照や風通しを妨げるといった状況を招き、近隣住民からの苦情やクレームの原因になります。
何度注意されても対応しないと、越境部分の剪定・伐採を強く求められ、被害の程度によっては、損害賠償や法的なトラブルに発展するといった可能性も否定できません。
空き家そのものだけでなく、「庭」や「外構」の放置も、ご近所トラブルの火種になりやすい点に注意が必要です。
このように、解体費用を惜しんで長年放置してしまうと、税金・罰金・賠償・ご近所トラブルなど、別の形でより大きな負担を背負うリスクが高まります。
「いくらくらいで解体できそうか」「補助金は使えないか」「最低限の管理でリスクを下げる方法はないか」など、早めに情報収集や専門家への相談を進めておくことが、結果的に一番の節約と安心につながるといえるでしょう。
まとめ
空き家の解体には相応の費用がかかりますが、解体補助金を使えば最大100万円規模で負担を軽くできる可能性があります。
ただし、どの自治体も予算は限られており、条件がつくケースがほとんどです。
「まだ大丈夫」と先延ばしにしているうちに建物の劣化が進むと、補助の対象から外れてしまったり、「特定空家等」「管理不全空家等」に指定されて税金やリスクが一気に増えたりするおそれもあります。
空き家解体補助金は、老朽化した建物を安全に処分し、費用負担を軽減する上で非常に有効な制度です。
ただ、すべての空き家に対してすぐに解体という選択ができるとは限りませんし、「将来どうするか決めきれない」「相続人同士で意見がまとまらない」といったケースも少なくありません。
そうした場合には、「特定空家等」「管理不全空家等」に指定されないよう、定期的な見回りや通風などを行ってくれる空き家管理サービスの活用を検討してみてください。
専門の事業者に管理を委ねておくことで、近隣トラブルや倒壊リスクを抑えつつ、補助金の利用を含めた「解体するか・活用するか」の判断を落ち着いて検討できる時間的・心理的な余裕が生まれます。
解体補助金の情報収集と併せて、空き家管理サービスの活用も選択肢の一つとして押さえておくことが、空き家問題を無理なく前向きに解決していく第一歩といえるでしょう。