実家が空き家になったときの最適解は?
放置リスク・税金などを分かりやすく解説
親が施設に入居したり入院したりすると、実家だけがぽつんと残り「気づいたら空き家になっていた」というケースが見受けられます。国の調査でも空き家の取得理由の多くが相続によるものとされており、もはや他人事ではありません。
とはいえ自分はすでに別の場所で生活していて戻る予定もない、周辺の需要も読めないなどの理由から「とりあえず今はそのまま」にしてしまう方も多いのが実情です。
しかし空き家を放置すると税金・維持費だけでなく建物の劣化や近隣トラブル、さらには特定空家等に指定されるなどして固定資産税が最大6倍になるなど、思わぬ負担を背負い込むおそれがあります。
実家を将来の大きな「負債」にしないためには空き家になったタイミングで早めに現状を整理し、方針を決めて動き出すことがとても重要です。
そこでこの記事では、
- 空き家を放置する具体的なリスク
- 実家が空き家になったときの主な対処法
- 相続と管理の初期対応
- 売却しにくい空き家の出口戦略
まで、順番に解説していきます。
目次
1- 実家が空き家になる主な理由
高齢化や核家族化が進むなかで、「気づいたら実家が空き家になっていた」というケースは珍しくありません。特に次のようなパターンで、実家が無人となり空き家化することが多く見られます。
両親が入院しそのまま実家が空き家になるケース
まず多いのが両親の病気やケガをきっかけに長期入院となり、結果として実家に誰も住まなくなるパターンです。
入院は多くの場合「一時的なもの」と受け止められるため、
「そのうち退院してまた家に戻るだろう」
「治療が落ち着くまで様子を見たい」
「今は忙しくて家のことまで手が回らない」
と考え、家の扱いを先送りにしがちです。
しかし入院期間が長期化したり、そのまま施設入居に切り替わったりすると気づいたときには実家は事実上の空き家になっていることがあります。
両親が老人ホーム・高齢者住宅へ入居して実家だけが残るケース
両親が介護付き施設やサービス付き高齢者向け住宅、有料老人ホームなどへ入居し実家だけがぽつんと残るケースです。
この場合、子ども世帯としては、
「親が生きているうちは、実家を勝手に売却・賃貸に出していいのか迷う」
「親が『家は残してほしい』と言っているので、すぐに処分しづらい」
「兄弟姉妹で、売る・貸す・残すの意見が分かれている」
といった心理的なハードルや、家族間の調整の難しさがネックになります。その結果、実家が「名ばかりの資産」「管理コストだけがかかる空き家」になってしまうことが少なくありません。
子ども世帯の近くに親が転居して元の自宅が空き家になるケース
近年増えているのが親が自立しているうちに、
「将来の介護や通院を考えて、子どもの近くに引っ越す」
「遠距離での見守りに不安があるため、親を呼び寄せる」
といった理由で、親が子ども世帯の近くへ転居するパターンです。
このケースでは、親の新居(賃貸・分譲・高齢者住宅など)の準備や引っ越し・各種住所変更・ライフラインの契約変更など目の前の手続きが優先されるため、元の自宅については「とりあえずそのまま」にされやすい傾向があります。
「家への思い入れが強く手放す決心がつかない」「引っ越しの際に荷物の整理が終わらず売却まで踏み切れない」「いずれ家族や誰かが住む可能性があると考えている」などの事情が背景にあります。
本来であれば早い段階で、「売却するのか」「賃貸やセカンドハウスとして活用するのか」を考え、将来子や孫が住む可能性がどの程度あるのか、その可能性が低いなら資産価値が高いうちに処分するのかといった方針を、家族で話し合っておくことが重要です。
2- 実家を空き家のまま放置するリスク
両親が施設に入居したり亡くなったりして、誰も住まなくなった実家を「とりあえず今はそのままにしておこう」と空き家のまま放置しているご家庭は少なくありません。
しかし、住む人がいなくなった家は想像以上のスピードで傷みが進み、固定資産税などの維持費だけでなく、修繕費・解体費、近隣トラブルなど、さまざまなリスクを抱え込むことになります。
この章では、実家を空き家のまま放置することで具体的にどのようなリスクが生じるのかを整理し、「なんとなく様子見」のままにしておくことの危うさを分かりやすく解説していきます。
固定資産税などの維持費が毎年かかり続ける
人が住んでいなくても、不動産を所有している限り税金や保険料は発生します。数年放置するだけでも、かなりの金額になります。
老朽化が一気に進んで資産価値が下がる
人が住んでいない家は、換気・清掃・給排水の使用がなくなるため、居住中よりも傷みやすい状態になります。特に木造住宅は、放置期間が長くなるほど劣化が加速します。
- 換気不足からカビ・ダニ・害虫が発生
- 屋根や外壁の傷み・雨漏り
- 庭木の伸び放題、雑草の繁茂
こうした状態になると売却価格が大きく下がるだけでなく、賃貸に出すにも大規模なリフォームが必要になり解体費や修繕費が大きな負担となります。
近隣トラブル・損害賠償の原因になる
管理されていない空き家は、周辺環境にも悪影響を及ぼします。
- 劣化した屋根材・外壁材が飛散して近隣の人や車に被害を与える
- シロアリやカビが隣家へ広がる
- 伸びた庭木が敷地境界を越えてしまう・倒木の危険が出る
- ゴミの不法投棄や悪臭など、衛生面で問題が発生する
事故や損害が発生した場合、所有者が賠償責任を負う可能性もあります。「誰も住んでいないから迷惑をかけていない」という感覚は、残念ながら通用しません。
犯罪・放火の温床+「特定空家等」で税金が最大6倍に
長期間人の出入りがない家は、不法侵入・不法投棄・放火などの標的になりやすくなります。空き家に不審者が住み着き、近隣で窃盗被害が発生するケースも報告されています。
さらに、2015年には「空家等対策の推進に関する特別措置法」が施行され、2023年には大きく改正されました。この法律に基づき、危険な状態にある空き家である特定空家等やこのままでは特定空家になりそうな空き家である管理不全空家等に該当すると、市区町村から指導・勧告・命令などの対象となり、勧告に従わない場合には住宅用地の特例が外れて固定資産税が最大6倍、都市計画税が最大3倍になる可能性があります。
最終的には行政代執行で強制解体され、その費用を請求されることもあり得ます。
3- 実家が空き家になったときの選択肢
空き家を「とりあえず放置」から卒業するためには、まず大きな方向性を決める必要があります。代表的な選択肢は次のとおりです。それぞれの特徴を詳しく見ていきます。
売却
実家に戻る予定がなく、まとまったお金が必要な場合は売却がもっともシンプルです。売却すれば固定資産税や管理コストから解放され、施設入居費や相続税の支払いなど資金需要にあてられるといったメリットがあります。
売却方法としては、以下が考えられます。
- 不動産仲介で売る:相場に近い価格で売れる可能性が高いが、売れるまで時間がかかることも
- 不動産会社に買取してもらう:価格は相場の6~8割程度になりやすいが、早く確実に現金化できる
- 古家付き土地を解体して更地売却:更地にしたほうが売れやすいエリアもあるが、解体費用+更地の固定資産税アップに注意
いきなり1社だけの話で決めてしまうと後悔のもとになるので、不動産一括査定サイトなどで複数社の査定額を比較するのがポイントです。
賃貸
「思い出の家を残したい」「将来的に子ども世代が住むかもしれない」といった場合は、賃貸活用という選択肢もあります。
賃貸の主なメリットは以下のとおりです。
- 実家を壊さずに活用できる
- 家賃収入で固定資産税などの負担をカバーしやすい
- 人が住むことで、空き家放置より老朽化を抑えられる
一方で、入居可能な状態にするためのリフォーム費がかかる、貸主側で固定資産税・火災保険などは払い続ける必要がある、立地や築年数によっては借り手がつきにくいといった点がデメリットです。
事前に家賃収入と経費の見込みをきちんと試算しておきましょう。
賃貸運用でよく使われる工夫
- DIY型賃貸借:大がかりなリフォームは行わず、入居者が自己負担で内装を整える代わりに賃料を抑える方式
- シェアハウス・民泊・店舗利用:部屋数が多い・立地に特徴がある場合は、住宅以外の用途で収益化できる場合も
- 定期借家契約:将来自分や家族が戻る可能性があるなら契約期間を区切って貸し出すことで、期間満了時に確実に明け渡してもらいやすくなる
成功している例もあれば、修繕費と空室で赤字になってしまう例もあり、収支シミュレーションと長期的な修繕計画がカギになります。
空き家管理サービス
「今は使わないが、将来子どもが使う可能性もある」「見知らぬ人に貸すのは抵抗がある」という場合は、空き家管理サービスを利用する方法があります。
サービス内容の例:
- 月1回~の巡回
- 郵便物の確認
- 外観や庭木のチェック など
メリット
- 自分で頻繁に通えなくても、プロの手で適切に管理してもらえる
- 特定空家等・管理不全空家等への指定や近隣トラブルのリスクを抑えられる
- 将来売却・賃貸するときの資産価値を維持しやすい
デメリット
- 管理委託料(月額数千円~1万円前後)がかかる
- 収入は発生しないため、資金的な余裕がないと負担に感じやすい
「今は動けないけれど、放置だけは避けたい」という場合の暫定策としても有効です。
4- 実家が空き家になった直後にやるべき基本対応
本格的に売却や賃貸を検討する前に、「相続手続き」と「最低限の管理」の2つを進めておく必要があります。
相続手続きの流れを押さえる
親が亡くなった場合、実家を含む遺産全体について、次のような流れで整理していきます。
1. 相続人・遺言書の確認
- 戸籍謄本などから相続人を確定します
- 公正証書遺言などがあれば、その内容が優先されます
2. 分け方を決める
- そのまま家を引き継ぐ「現物分割」や、売却して代金を分ける「換価分割」、誰か1人が家を引き継ぎ、ほかの相続人に代償金を支払う「代償分割」などがあります。
- 相続放棄を検討する場合は、ほかの財産も含めて慎重に判断します
3. 相続登記(名義変更)の申請
- 「不動産を相続で取得したことを知った日」から3年以内に、法務局で相続登記をすることが義務化されています。
4. 相続税の申告・納税
- 相続税の対象となる場合、被相続人が亡くなった日の翌日から10カ月以内に申告と納税が必要です。
空き家としての初期管理をしておく
相続手続きと並行して、次のような対策を取ると劣化やトラブルを防ぎやすくなります。
ライフラインの見直し
- 電気・ガスは、長期間使用しないなら解約も検討
- 水道は排水設備保護のため、あえて残しておくケースもあるので、状況に応じて判断
防犯・防災対策
- 窓やドアの施錠徹底、雨戸を閉める
- 人の出入りがないと分かりにくい工夫をする
不用品・遺品の整理
- 腐敗・害虫発生を防ぐためにも、早めに片づけを進める
- 自分たちだけで難しければ遺品整理業者の利用も検討する
敷地境界の確認
- 将来の売却や賃貸を見据えて、土地家屋調査士に依頼し、境界線をきちんと確定しておくとトラブル予防になる
5- リフォーム・リノベーションは本当に必要?
古い実家を「このままでは使えない」と感じる場合、リフォーム・リノベーションを検討することになりますが、やみくもに大規模工事を行うのは危険です。
自分たちが住む、または戸建て賃貸として長期運用する場合は耐震・断熱・水回りなどを含めた大規模リフォーム(1,000万~2,000万円程度)も選択肢として入れるとよいでしょう。
ただし近いうちに売却予定がある場合、高額なリフォームをしても、その分価格に上乗せできるとは限らないため、不動産会社と相談しながら「どこまで手を入れるか」を決めるのが無難です。
なお一定の条件を満たすリフォームでは、補助金や減税制度が使える場合もあります。
耐震化・省エネ・バリアフリーなどの工事は特に支援策が多いため、自治体や専門業者に確認してみましょう。
まとめ- 空き家問題解決に向けて
実家が空き家になったとき、放置してしまう気持ちはよく分かりますが、何も決めないまま時間だけが過ぎると、
- 維持費・税金が毎年積み上がる
- 建物の劣化で資産価値が下がる
- 特定空家等・管理不全空家等に指定され、税負担が最大6倍になるリスクが高まる
など、後から振り返って「もっと早く動いておけばよかった」と感じる事態になりかねません。
大きな方向性としては、
- 実家を手放すなら → 売却
- 残したい+収益化したいなら → 賃貸
- 残したいが他人には貸したくないなら → 空き家管理サービス
という3つの選択肢があります。
その上で、
- 相続手続きをきちんと進める
- 初期管理(防犯・ライフライン・遺品整理・境界確認)を行う
- リフォームや売却方法、国庫帰属制度なども含めて検討する
といったステップを踏んでいけば、実家の空き家を「悩みのタネ」から「納得のいく形」へと整理していくことができます。
迷ったときはまず空き家管理サービスに相談して、空き家管理を早めに始めることがおすすめです。早めの一歩が、将来の大きな負担を減らすことにつながります。