空き家の固定資産税はなぜ最大6倍に?
「特定空家等」「管理不全空家等」と税負担を避けるためのポイント
日本では人口減少や高齢化、都市部への人口集中などを背景に、使われなくなった住宅が年々増えています。統計上も総住宅数に占める空き家の割合は決して少なくなく、「身近な社会問題」として無視できないレベルになっています。
居住や利用の実態がない住宅が「空き家」といわれますが、誰も住んでいない建物であっても、所有している限り、持ち主には税金の負担と管理責任が発生します。
インターネット上では、
> 空き家を放置すると固定資産税が6倍になる
といった少しショッキングな言葉を見かけることもあります。
この「6倍」という数字は誇張ではなく、住宅用地の特例が外れることによって、土地にかかる固定資産税の負担が一気に跳ね上がる可能性を指しています。
そこで本記事では、
- 空き家にかかる税金の基本
- なぜ「税金6倍」という状態が生じるのか
- 「特定空家等」「管理不全空家等」に指定されると何が起こるのか
- 税負担やリスクを抑えるための具体的な対策
を空き家の所有者目線で分かりやすく整理して解説します。
目次
1- 空き家にかかる税金
まず押さえておきたいのは、家が空いているかどうかに関わらず、不動産を持っていれば原則として毎年かかる税金があるという点です。
空き家を所有していると、「誰も住んでいないのだから税金はあまりかからないだろう」と考えてしまいがちです。しかし実際には、固定資産税や都市計画税といった基本的な税負担に加え、管理状態によっては住宅用地特例が外れ、税額が大きく跳ね上がるケースもあります。
この章では、空き家に対して具体的にどのような税金がかかるのかを整理して解説します。
固定資産税
固定資産税は、毎年1月1日時点で土地や家屋などの「固定資産」を所有している人に、市区町村から課税される税金です。空き家であっても、ほかの住宅と同じように課税対象になります。
計算の基本式は次のとおりです。
> 固定資産税 = 課税標準額(固定資産税評価額) × 1.4%(標準税率)
評価額が同じであれば、空き家でも居住中の住宅でも、基本的な税額計算の仕組みは変わりません。
都市計画税
土地や建物が市街化区域内にある場合は、固定資産税とは別に「都市計画税」が課されるケースもあります。これは道路や公園など、都市計画事業の財源となる税金です。
> 都市計画税 = 課税標準額 × 税率(上限0.3%)
税率は市区町村ごとに異なりますが、多くは0.2~0.3%の範囲に設定されています。
このように、所有しているだけで毎年発生するのが固定資産税・都市計画税であり、空き家であっても例外ではありません。
2- 税金が軽くなる「住宅用地の特例」とは
空き家の税負担を考える上で、もっとも重要なキーワードが「住宅用地の特例」です。固定資産税が「6倍になる」という話も、この特例が外れるかどうかに直結しています。
住宅用地の特例とは
住宅が建っている土地については、居住の安定を図る観点から、土地にかかる固定資産税・都市計画税の課税標準を大幅に軽減する仕組みが設けられています。これが「住宅用地の特例」です。
住宅が建っている土地であれば、人が住んでいる家だけでなく、誰も住んでいない空き家でも、一定の条件を満たせばこの特例の対象になります(特定空家等の勧告を受けていない場合)。
空き家をすぐに解体しない人が多い理由
人が住んでいない老朽化した家であれば、「解体してしまったほうがスッキリするのでは」と考えるかもしれません。
しかし、実務の現場では、
- 解体費用が高い
- 解体すると税金が増える
という2つの理由から、あえて建物を残しているケースが少なくありません。
建物を取り壊して更地にすると、その土地は「住宅用地」と認められなくなり、先ほどの特例が使えなくなります。
その結果、
- 土地の固定資産税は最大で約6倍
- 都市計画税も最大で約3倍
といった水準まで税負担が増えることがあります。こうした事情から、ボロボロの空き家であっても、更地にせず放置されがちという構造が生まれています。
3- 「税金6倍」になる仕組み:特定空家等・管理不全空家等とは
空き家が社会問題化する中で、国は「空家等対策の推進に関する特別措置法」を制定しました。この法律に基づき、管理が不十分な空き家については行政が関与し、住宅用地の特例を外すことができる仕組みが整えられています。
特定空家等とは
「特定空家等」とは、空き家法において特に問題が大きいと判断された空き家を指します。
具体的には例えば以下のような状態の空き家です。
- 放置すると倒壊するおそれがあり、安全面で著しく危険と認められるもの
- ゴミの放置や害虫の発生などにより、衛生面で深刻な悪影響を及ぼしているもの
- 壁や屋根の破損、草木の繁茂などで、周囲の景観を著しく損ねているもの
要するに、「このまま放っておくのはさすがに問題だ」と自治体が判断した空き家が、特定空家等に指定されます。
管理不全空家等とは
2023年の法改正で新設されたのが「管理不全空家等」という概念です。これは、
> 現時点で特定空家等とまではいえないものの、今のまま放置すると将来特定空家等になりかねない空き家
を対象とします。
- 草木が伸び放題
- 破損箇所を放置
- 郵便物が大量にたまっている
など、「まだ致命的ではないが、このまま行くと危険」という段階で行政が早めに介入できるようになりました。
住宅用地の特例が外れるタイミング
特定空家等・管理不全空家等に該当したからといって、すぐに税金が増えるわけではありません。税負担が増える重要なポイントは、市区町村長から「勧告」を受けたかどうかです。
- 行政が現地調査や所有者への連絡などを行い
- 是正の必要があると判断し
- 所有者が改善しない場合に、「勧告」が出される
この「勧告」を受けた空き家の敷地については、翌年度から住宅用地の特例の対象外となり、結果として固定資産税が最大6倍程度まで増えることがあります。同様に都市計画税の軽減も外れます。
実際に税金が上がるのはいつから?
固定資産税・都市計画税は、毎年1月1日時点の状況をもとに課税されます。そのため、勧告を受けた年のうちに適切な管理や改修・解体を行い、状態が改善されれば、翌年度からの税額が増えない可能性があります。
反対に、改善が1月2日以降にずれ込んだ場合、その年の税額には特例なし(増税後)の計算が適用される可能性があります。
自治体から指摘を受けたら、放置せず早めに動くことが重要です。
4- 勧告から命令・行政代執行までの流れとそのほかのリスク
特定空家等・管理不全空家等と判断された場合、行政による対応は段階的に進みます。
行政手続きのステップ
行政手続きは以下の流れで進みます。
1. 指導・助言
まずは所有者に対して、「草木を刈ってください」「危険な部分を修繕してください」といった形で、改善のための助言や指導が行われます。
2. 勧告
指導を無視して改善が見られない場合、あるいは危険度が高いと判断される場合に「勧告」が出され、この段階で住宅用地の特例の適用除外というペナルティが発動します。
3. 命令
勧告後も必要な措置を取らない場合、所有者に対して「○日以内に○○を実施せよ」といった法的拘束力のある命令が出されます。
4. 行政代執行
命令すら履行されない場合、最終手段として自治体が所有者に代わって建物の修繕や解体を実施することがあります(行政代執行)。代執行にかかった費用は、後日所有者に請求されます。
さらに命令に従わなかった場合には、50万円以下の過料(罰金に相当する行政上の制裁)が科される可能性もあります。
税金以外の主なリスク
空き家を放置していることによるデメリットは、税金の増額だけではありません。
損害賠償リスク
倒壊した屋根材やブロック塀が通行人に当たってけがをさせた、飛来物で隣家の車を傷つけたといった場合、所有者は民法上の損害賠償責任を負う可能性があります。
建物の価値の低下
換気されない建物は湿気がこもり、カビ・シロアリ・配管の腐食などが急速に進みます。数年放置するだけで、まともに使えない状態になることも珍しくありません。
地域の景観・治安の悪化
荒れた空き家は、ゴミの不法投棄や不審者の侵入などの温床となり、近隣住民とのトラブルやクレームに発展することもあります。
5- 「税金6倍」を避けるための空き家対策
こうしたリスクを防ぐためには、「空き家のまま維持するのか」「空き家にしないのか」という方針を早めに決め、計画的に対処することが重要です。
空き家のままにしない選択肢(活用・処分)
管理コストや精神的負担を考えると、「空き家にしない」という方向に舵を切るのも現実的な選択肢です。
売却する
建物付き土地として売る、もしくは解体して更地として売るという方法があります。管理が十分でない空き家は傷みが早く、市場価値が落ちやすいため、早期に売却の検討を始めたほうが有利になるケースも多いです。
仲介では時間がかかりそうな場合、不動産会社の買取を利用することで、短期間で現金化できる場合もあります。
相続した空き家については、一定の条件のもとで、売却益から最大3,000万円までを控除できる特例(いわゆる「相続空き家の3,000万円特別控除」)が使える可能性もあるため、事前に税理士や専門家に確認しておくと安心です。
賃貸として活用する
リフォーム・耐震補強などを行い、戸建て賃貸や古民家賃貸として貸し出す方法もあります。
家賃収入によって固定資産税や維持費をカバーできる可能性もありますが、オーナーとしての管理責任は続くため、長期的な収支計画が必要です。
解体して更地にする
解体費用がかかる上、住宅用地の特例が使えなくなるため、短期的には税負担が増えるのが一般的です。
しかし、立地によっては、駐車場・トランクルーム用地・事業用地など、土地としての活用価値が高まり、トータルで見ればプラスになる場合もあります。
売却を前提とするなら、「老朽化した建物つき」よりも「更地」のほうが需要が高いエリアも少なくありません。
空き家のまま維持する場合のポイント
空き家問題の解決には、個人の取り組みだけでなく、行政や社会全体が連携したアプローチが不可欠です。
自己管理を行う場合
- 月1回程度は現地を訪れ、換気・通水・掃除を行う
- 雨漏り・ひび割れ・外壁の剥離などがないかチェックする
- 庭木の剪定や除草を行い、道路にはみ出さないよう管理する
専門業者に管理を委託する場合
遠方に住んでいる、忙しくて通えないといった場合は、空き家管理を専門に行う事業者に任せる方法もあります。
定期巡回、写真付き報告などをセットにしたサービスもあり、「管理している」ことを行政に対して示しやすいというメリットもあります。
補助金の活用や防犯対策
- 自治体の改修補助金・リフォーム補助金を活用して劣化部分を修繕する
- 防犯カメラや人感センサーライトなどを設置し、不法侵入やいたずらを抑止する
こうした対策により、特定空家等・管理不全空家等に指定されるリスクを大きく減らすことができます。
まとめ
空き家であっても、所有している限り固定資産税・都市計画税の負担が続きます。
多くの住宅用地は「住宅用地の特例」によって大きく税額が軽減されていますが、特定空家等・管理不全空家等として勧告を受けると、この特例が外れ、土地の固定資産税が最大約6倍に増える可能性があります。
行政からの指導・勧告・命令を無視し続ければ、行政代執行や過料、損害賠償リスクなど、金銭面・法的面の負担はますます大きくなります。
空き家を所有している、もしくは近い将来相続する可能性がある場合は、
- 自分で管理するのか
- 専門業者に委託して維持するのか
- 売却・賃貸・解体など、空き家にしない方向で動くのか
といった方針を早い段階で決めましょう。何より重要なのは「放置しないこと」です。適切な管理や活用の方針を選択することで、税負担の増加やトラブルを回避し、ご自身やご家族の将来の負担を大きく軽減できます。
一方で、仕事や遠方居住などの事情で、定期的な見回りや通風・通水、庭木の手入れまでを継続するのは現実的に難しいケースも多いでしょう。
だからこそ、空き家管理サービスを活用し、定期巡回・簡易清掃・写真付き報告などで「管理している実態」を残しておくことは、特定空家等のリスクを下げる上で有効な選択肢です。
放置による損失が大きくなる前に、無理なく続けられる管理体制を整えておくことをおすすめします。
弊社の空き家管理サービスをぜひご利用ください。