空き家でも火災保険に入れる?
加入可否の判断基準、選び方、想定リスクまで解説
空き家をお持ちの方は「空き家でも火災保険に加入できるの?」「住む予定がないのに必要?」というお悩みをお持ちの方も少なくないでしょう。結論からいえば、空き家でも加入は可能です。
ただし一般的な居住中物件とは条件や商品設計が異なり、選び方にもコツがあります。
また空き家を持ち続けること自体が、放火・自然災害・老朽化による倒壊、さらには近隣への損害といった固有のリスクを伴います。万一のときに備えるためにも、空き家こそ保険での手当てが重要です。
そこで本稿では空き家で加入できる火災保険のタイプ、加入が通る(通りにくい)ケース、補償の選び方や保険料の考え方、維持コストや行政リスクを踏まえた売却という出口まで、必要事項を一気に整理します。
目次
1- なぜ空き家こそ火災保険が必要なのか:見落としがちなリスク
空き家は日常的な目配りが効きにくく、問題があっても発見が遅れて被害が拡大しやすいのが難点です。だからこそ、火災保険による資金面の備えが必須といえるでしょう。
空き家に特有の主なリスク
空き家は「使っていないから安全」ではなく、「使っていないからこそ危険」が積み上がる資産です。
人の目が届かない時間が長いほど、放火・侵入・不法投棄といった人的リスクは高まり、老朽化・漏水・カビ・害虫獣などの物理的劣化も加速します。
本節では空き家に特有の主なリスクを整理し、解説します。
放火
人の出入りが少なく管理が緩い物件ほど標的になりやすいといわれます。統計上、放火関連の火災は一定数発生しており、空き家は狙われやすい傾向があります。
漏電・設備劣化
使っていない間に配線や機器が傷み、電気起因の火災につながることもあり得ます。定期点検がなければ発見が遅れがちです。基本はブレーカーを落としておくのが無難でしょう。
自然災害
台風・落雷・豪雨・洪水・地震などの外力に脆弱になりやすく、屋根破損や浸水、土砂被害が起こり得ます。揺れによる配線・ガス管損傷からの火災誘発も想定されます。
老朽化・倒壊と損害賠償
屋根瓦や外壁が落下したり、建物自体が倒壊したりして近隣に被害が及ぶと、所有者が賠償を求められるリスクがあります。
無保険時にのしかかる費用
保険がなければ、修繕・再建・解体・残置物処分などを自己負担することになります。損害の規模によっては数百万円単位になることもあり得ます。
さらに延焼や倒壊で他人を傷つけた場合の賠償金も自腹となり、家計への衝撃が非常に大きくなります。
2- 空き家の加入可否と「物件種別」:住宅物件・一般物件のどちら?
火災保険には空き家でも加入可能ですが、全社に積極的に加入できるわけではありません。
共済系も原則は「居住用」が対象のため、非居住だと断られがちです。相続で元の保険を惰性で継続しているケースも要注意です。
契約上「空き家が対象外」だと、事故時に不払いとなる可能性があります。空き家化したら必ず窓口で適用可否を再確認しましょう。
火災保険の物件区分はおおむね「住宅物件/一般物件/工場/倉庫」に分かれます。空き家で現実的なのは住宅物件または一般物件です。
- 住宅物件:居住を目的とする建物への保険です。保険料が比較的安く、地震保険と併用可能です。
- 一般物件:店舗・事務所・寮など住居目的外とする建物への保険です。保険料は高めで、地震保険は原則不可です。
空き家向け専用商品もあります。近隣賠償や管理由来の事故対策に強みがあります。
住宅物件として扱える例
- 別荘など季節利用で家財も維持
- 転勤などで一時的に非居住(将来居住予定あり)
- 賃貸募集を行い居住用途が明確
ただし判断は保険会社次第です。複数社で見積もり・条件確認をすると通りやすく、保険料も最適化しやすいといえるでしょう。
一般物件扱いとなる例
- 相続後出入りゼロ。今後も居住予定なし
- 長期未使用で家財もなし(または残置だが居住用途なし)
- 住居だったが現状も将来も住用途に戻さない
このような場合は一般物件扱いとなる傾向です。一般物件は料率が高い傾向に加え受けていない会社も多いので、加入先の選定は慎重に実施しましょう。
3- 空き家で起こると考えられる火災の具体例
空き家の火災は「誰も住んでいないから起きにくい」ではなく、発見が遅れるぶん被害が大きくなりやすいのが実態です。しかも原因は居住中とは様相が異なる部分があります。
放火
あふれたチラシ、伸び放題の草木、割れたガラス、放置ゴミなどの「管理されていない」外観は不審者を引き寄せがちです。清掃・施錠・照明・防犯掲示などの見た目対策は有効です。
設備起因:漏電・ガス・給排水
長期不使用で配線・機器が劣化し、熱や火花が可燃物に着火する例です。ガスや給排水系の故障が火災や水濡れ被害を拡大させることもあり得ます。定期点検とブレーカー遮断が基本です。
自然由来:落雷・台風・地震
- 落雷:直撃・誘導で通電機器が焼損することあり
- 台風・暴風雨:屋根破損→雨水浸入→ショート
- 地震:配線・ガス管破損→二次災害的な出火
事前のメンテナンスと非常時の電源遮断手順を決めておきましょう
4- 空き家向け火災保険の選び方:補償・賠償・地震・金額設定
空き家向け火災保険は以下のポイントに注意を払い、選びましょう。
補償範囲は「火災+周辺リスク」まで広げる
空き家は発見遅延で被害が増大しやすいので、火災だけでなく風災・水災・落雷・盗難・破損汚損・水ぬれ・飛来衝突・残存物片付け費用など、立地と建物状態に合わせて保険を選びましょう。ただし補償の範囲が限定的になるのが通常です。
賠償リスク(対人・対物)への備え
- 個人賠償責任保険:自宅・相続空き家など私有物件の所有者責任をカバー。火災・倒壊が他者に被害を及ぼした際の備えに、火災保険の特約で付けるのが一般的。
- 施設賠償責任保険:賃貸など事業由来ならこちらがよい。
地震保険の取り扱い
火災保険は原則地震・噴火・津波を補償しません。住宅物件なら地震保険をセットで加入可能です。一般物件では地震保険は原則不可ですが、地震関連の特約が用意されることもあるので各社要確認です。
地震で倒壊した場合の解体・処分費は高額化しがちです。可能なら備えておきたい項目です。
保険金額・免責金額の考え方
保険金額は再建・修繕に必要な額を目安に過不足ないのがよいでしょう。解体・残置物処理も視野に入れてください。近年の自然災害増加・修繕費高騰の影響で、火災保険は値上がり基調です。
各社の取り扱い確認が必要です。
節約の工夫
- リスクに応じて不要補償を外す(例:高台で水災リスク低いなど)
- 家財補償を外す(残置が少ない場合)
- 免責(自己負担)を高めて保険料を下げる
- 複数年契約で料率据え置きのメリットを得ることも
管理不備=重過失の扱いに注意
契約条件・特約は必ず精読ください。鍵の掛け忘れや長期無管理など重大な過失が認定されると、不払い・減額のリスクがあります。
空き家でも定期巡回・施錠・清掃・簡易防犯などで注意義務を尽くした痕跡を残しましょう。
5- 空き家の維持コスト
火災保険料は戸建てで年1~6万円程度が目安(補償を広げると地域・構造次第で年10万円前後になるケースも)です。
ただし固定資産税・都市計画税、名義変更時の登録免許税、修繕・巡回・草刈り・光熱の基本料など、持っているだけで費用が積み上がります。
年間トータルで数十万円規模になることも珍しくありません。
6- 特定空家等・管理不全空家等
放置すると管理不全空家等(将来、特定空家等になりかねない)や、近隣へ著しい悪影響がある特定空家等に指定される可能性があります。
指定されると固定資産税の優遇が外れ、負担が最大6倍になる可能性や、勧告・命令・罰則・強制解体に発展することも。所有を続けるなら計画的な管理が不可欠です。
7- 「加入も維持も負担」なら、売却という選択肢
保険・税金・管理の負担が重い、あるいは加入自体が難しい老朽物件なら、売却で手離すのも合理的です。
加入困難時の現実的な対応
- 解体(更地化):放火・倒壊リスクを根本から解消。ただし費用と、更地化で税負担が増える点に留意。
- 定期管理の徹底:巡回・通風・清掃・施錠・通水などを記録付きで継続し、万一の際の注意義務履行の根拠に。
- そのまま売却:解体資金が厳しく、管理継続が難しいときは空き家付き土地として売却。
売却方法:仲介 VS. 買取
- 仲介による売却:需要が見込まれる場合に有効。立地・築浅・状態良好などなら相場に近い価格が期待される。ただし成約までに時間がかかり仲介手数料が必要。
- 買取業者による買取:老朽・需要薄・瑕疵多めの場合に有効。早期現金化が可能、現状渡しで手数料不要。ただし価格は相場の5~8割を想定する必要。
老朽や損傷が目立つ物件は仲介で買い手がつきにくい一方、買取業者は解体・建替・リフォームを自社で実行できるため、現状のまま応じてくれるのが強みといえるでしょう。
8- 空き家の火災保険に関するよくある質問
この章では空き家の火災保険に関するよくある質問に改めてお答えします。
Q.空き家だと断られることはある?
A.
あります。居住用限定の商品も多く、空き家は一般物件扱いで割高・加入不可となることが想定されます。空き家専用や柔軟な引き受けをする会社もあるため、複数社の比較が必須です。
Q.火事の責任は所有者に及ぶ?
A.
管理不備(漏電放置、ゴミ放置で放火誘発など)が原因なら賠償責任を問われる可能性があります。保険の個人賠償特約などでの備えに加え、日常管理の実践と記録が重要です。
Q.地震保険は付けられる?
A.
住宅物件なら火災保険とセットで可能なことが想定されます。一般物件は原則不可ですが、会社によっては地震特約に類する選択肢がある場合もあります。個別に要確認です。
Q.管理状態は加入・支払いに影響する?
A.
します。老朽・無管理は加入拒否や不払いの火種になります。巡回・施錠・清掃・防犯・簡易修繕で適切な管理を続け、重過失の疑いを排除しておきましょう。
まとめ
空き家でも火災保険の加入は可能です。ただし物件種別(住宅/一般)で扱いが分かれ、地震保険の付帯可否や保険料も大きく変わります。
補償は火災+周辺リスクまで広げ、賠償責任にも目配りが必要でしょう。金額設定は再建費用+解体・残置処理まで視野に入れましょう。
必要な補償を必要なだけ、加入できる今のうちに確保しておけば、万一の被害があっても財務インパクトを大幅に抑えられます。空き家の状態・立地・将来方針に合わせて、複数社の見積りで設計を微調整していきましょう。
管理不備(重過失)は不払いリスクにつながります。定期点検・施錠・清掃・防犯で実質的な管理体制を維持しましょう。
空き家は所有する限りは管理が必要です。空き家の管理なら、弊社の「空き家管理サービス」をぜひご利用ください。